妊産婦さんが安心して出産に向き合える環境をつくりたい
- 産婦人科(麻酔科医)
- 常勤
鈴木 菜穂(Naho Suzuki)
資格
- 麻酔科標榜医
- 日本麻酔科学会 麻酔科認定医
- 日本専門医機構 麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会 麻酔科指導医
- 新生児蘇生法(NCPR) インストラクター
- 日本DMAT隊員
専門分野
- 麻酔全般
- 産科麻酔
経歴
- 東京慈恵会医科大学 卒業
- 東京慈恵会医科大学附属病院 研修医
- 東京慈恵会医科大学 麻酔科医局
- 埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科フェロー
- 松江赤十字病院 麻酔科
どのような想いで診療を行っていますか?
妊娠や出産は、新しい命を迎える喜びがある一方で、多くの不安や悩みを抱える時期でもあります。
私自身、シングルマザーとして2人の子どもを育てています。親族のサポートがない中で、病院のスタッフやシッターさん、友人たちなど、本当に多くの方に支えられながら子育てをしてきました。
出産も決して順調なことばかりではありませんでした。1人目は予定帝王切開、2人目は予定日前日に破水し、夜中に緊急帝王切開となりました。医療者である私自身も、「出産は思い通りにはいかないものだ」と実感しています。
そうした経験もあり、妊婦さんやご家族が抱える不安に寄り添うことを大切にしています。
実際に患者さまとお話ししていると、不安の内容は本当にさまざまです。出産そのものへの心配はもちろん、ご家族のことや仕事との両立、出産後の生活について悩まれている方も少なくありません。
そのため診療では、症状や検査結果だけを見るのではなく、「どのような気持ちで出産を迎えようとしているのか」「何に不安を感じているのか」といった背景にも目を向けるよう心がけています。
また、同じ妊娠や出産であっても、家族構成や生活環境によって抱える悩みや不安は大きく異なります。私自身も子育てをする中で、一人ひとり置かれている状況が違えば、抱える悩みも違うことを実感してきました。
そのため診療では、妊婦さん一人ひとりの背景やお気持ちにも目を向けながら、その方に合ったサポートができるよう心がけています。安心して出産に向き合える環境をつくること。それが私の大切にしている診療の姿勢です。
専門分野について教えてください
もともと私は産婦人科医を目指していました。研修医時代も産婦人科を志望するコースに所属し、多くのお産や妊産婦さんと関わってきました。そうした経験を重ねる中で感じたのは、安心で安全なお産は主治医である産婦人科医だけで支えられるものではないということです。
産婦人科医は主治医として妊婦さんに寄り添いながら診療を行います。一方で、お産の現場では主治医とは別の立場から全体を見渡し、サポートする存在も必要です。
患者さまの全身状態はどうか、スタッフ同士の連携はうまく取れているか、緊急時に備えて何を準備すべきか。客観的な立場で考えながら支える役割に魅力を感じるようになりました。
その思いから、妊産婦さんを別の立場から支えたいという思いで麻酔科を選びました。現在は産科麻酔を専門とし、無痛分娩を中心に妊産婦さんのサポートに携わっています。
意外かもしれませんが、麻酔科は単に麻酔をかけるだけの診療科ではありません。患者さまの全身状態を管理しながら、救急医療や集中治療、疼痛管理など幅広い知識を活かして治療を支える診療科です。
実際に産後大量出血で搬送された患者さまの対応に携わった際には、その役割の大きさを強く実感しました。産婦人科医が出血を止めることに集中する一方で、麻酔科医は輸血や全身管理などを担いながら、患者さまを多方面から支えることができます。
産婦人科医とは異なる立場だからこそ、必要な情報を整理しながら冷静に全体を見ることができます。患者さまやご家族、そして医療スタッフを含めて広い視点で支えられることに、大きなやりがいを感じています。
診療で大切にしていることは何ですか?
一般の方にとって、麻酔科医はあまり身近な存在ではありません。そのため、「どんな先生なのだろう」「何をしてくれるのだろう」と不安に感じる方も少なくないと思います。
そのため、できるだけ早い段階で患者さまのもとへ伺い、自分がどのような立場でサポートするのか、どのような方針で管理を行うのかをお伝えするようにしています。
また、患者さまとのコミュニケーションも大切にしています。診療では「何か気になることはありませんか」とお聞きしますが、一度お尋ねしただけでは本当の不安や疑問が出てこないことも少なくありません。
実際に、最初は「特にありません」とおっしゃっていた方でも、何度かお話しするうちに「実はこんなことが気になっていて…」と打ち明けてくださることがあります。
一度のお声がけだけでは見えてこない不安もあるため、病室へ何度も足を運び、ときには世間話もしながら信頼関係を築くことを大切にしています。患者さまが不安や疑問を残したまま出産を迎えることがないよう、安心して何でも相談できる環境づくりを心がけています。
患者さまとご家族へのメッセージ
無痛分娩について、「興味はあるけれどよくわからない」「自分に合っているのか不安」と感じている方は少なくありません。
だからこそ、まず無痛分娩がどのようなものなのかをしっかりご説明し、正しく理解していただくことを大切にしています。そのうえで、ご自身やご家族にとって納得できる選択をしていただきたいと思っています。
また、できる限り患者さまのもとへ足を運び、コミュニケーションを取りながら不安や疑問を一つひとつ解消できるよう心がけています。無痛分娩に限らず、出産にはさまざまな不安が伴うため、小さなことでも遠慮なくご相談ください。
麻酔科は、出産を少しでも安心して迎えていただくためのサポート役です。無痛分娩を通じて出産への不安や苦痛を少しでも和らげたいと考えています。出産を笑顔で迎え、その後の育児にも無理なく向き合っていただけるようお手伝いすることが私の願いです。出産という特別な時間を、少しでも安心して過ごしていただければと思っています。